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ワイドバンドギャップ半導体の現在 JJ DeLisle

 

はじめに

 

今日、電気制御、通信、電力、作動、センシングに使用されるほとんどのシステムは、電動化され、電気的に接続されています。1950年代から、このようなテクノロジーの中核をなす半導体素子としてシリコン(Si)が使われてきました。極めて汎用性の高い半導体で、何十年にもわたり開発が続けられてきました。しかし、Siには、高出力、高周波、効率性、耐放射線性、低ノイズ、光電子機能などの面で限界があります。それに対して、第3世代の半導体、特にワイドバンドギャップ(WBG)半導体は、Siよりも優れた性能上の利点があるため、半導体製造インフラとプロセスの開発に多くの時間と労力がかかったとしても、経済的合理性があるといえます。

IV族、III-V族、II-VI族化合物半導体の多くは広いバンドギャップを持っています。これらの材料は、フォトニクス、LED、レーザーによく使用されますが、より幅広い半導体用途に適しているものはほんのわずかです。代表的なワイドバンドギャップ半導体素子は、炭化ケイ素(SiC)と窒化ガリウム(GaN)です。ダイヤモンド(C)半導体には、多くの優れた特性がありますが、その製造にかかる相対コストが、ダイヤモンド半導体の幅広い使用と実用化を阻んできました。それに対し、SiCとGaNは、大電力、高周波、高効率、高放射線などの環境でますます使用されるようになり、他の半導体技術では達成できない性能レベルを実現しています。さらに、SiCとGaN技術の成熟によって、より大幅なスケールメリットとウエハーサイズの大型化が実現し、コストが削減されることで、従来のSiパワーアプリケーションの多くにこの技術が適用できるようになります(1、図2)。

図1:シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、シリコン超接合(Si SJ)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)/ゲートターンオフ(GTO)サイリスタデバイスの電力と周波数の比較(出典:筆者)

図2:2022年後半時点のSi、GaN、SiCデバイスの相対的な電圧能力(出典:筆者)

 

2023年現在のSiCの状況

 

SiCは、数十年にわたる開発に裏付けられた最も成熟したWBG半導体技術です。近年、高電圧・高出力の電気自動車(EV)充電インフラにSiCが広く採用されるようになりました。EVメーカーや充電インフラメーカーが800V以上のEVシステムへ移行を進めているため、この動向は今後も続くでしょう。またSiCは、高電圧直流(HVDC)送電や再生可能エネルギーなどのアプリケーションでも採用が拡大しており、高電圧化によって導体サイズの小型化や導体損失の低減が可能になります。ただし、SiCは、依然として同等のSi技術のおよそ3倍から4倍のコストがかかるため、その優れた電圧能力がコストに見合うアプリケーションでのみ実現可能になります。例えば、SiCパワー半導体によって可能になる高電圧化は、太陽光発電(PV)やその他の再生可能アプリケーションに大きく貢献し、インダクタやトランスなどの受動部品の小型化・軽量化を可能にします。これにより、純コストの削減や競争上の優位性がもたらされる可能性があります。

SiCの主な用途は、力率改善(PFC)回路、AC/DC整流器、DC/ACインバータ、バッテリ充電器、データセンターのパワーエレクトロニクスなど、高電圧・高温のユースケースです。6インチSiCウエハーの生産能力は、EV市場向けに限って言えば、2021年の12万5,000枚から2030年には400万枚を超えるという予測もあり、こうした前年比の需要増加はSiC製造能力を大幅に拡大させています。現在の目標は200mm SiCウエハーの増産にあるようですが、将来的には、さらに大きなウエハーサイズが開発され、SiCデバイスの低価格化が進み、他の用途への扉が開かれる可能性があります。

 

2023年現在のGaNの状況

 

SiCが主に、従来のシリコンでは実現可能性が低かった600V以上のアプリケーションで採用されているのに対して、600V以下のアプリケーションでは、Si半導体に替わってGaN半導体が積極的に活用されています。GaNトランジスタには、電子移動度がSiやSiCの何倍もあるという、もうひとつの重要な利点があるからです。これにより、GaNデバイスははるかに高い周波数で動作することができ、それゆえ、スイッチングデバイスやRF技術において、より高い周波数と電力レベルでWBGの利点をもたらすことができます。ただし、GaN半導体の熱伝導率はSiCの半分以下になる傾向があり、その結果、電力処理能力が低下します。これが、高電力レベルでの極端な電圧にはSiCデバイスが選ばれる理由の1つです(3)。

現在、GaNパワー半導体デバイスは400V未満のアプリケーションで市場をリードしており、800Vを超えるアプリケーションでは、依然としてSiCパワー半導体がリードしているようです。400V〜800Vのアプリケーションでは、GaNとSiCは競争関係にあり、より高電圧のGaN技術が利用可能になるにつれて、この競争の範囲と電圧は拡大する可能性があります。2022年後半の1200V GaNデバイスの登場により、高電圧におけるGaNとSiCのこの競争は、確実に激化しています。2000V 以上のパワーデバイス市場は、比較的小さな市場ですが、大規模な産業システムの電動化が進み、より持続可能で再生可能な技術が一般的なグリッド電力システムに統合されるにつれて、緩やかに成長を続けてゆくと思われます。

図3:GaNとSiC半導体デバイスの用途と電圧の分布(出典:筆者)

現在、SiC基板と製造コストはGaNデバイスよりも高く、5kW超システムの最終的なデバイスコストはGaNとSiCで同じぐらいです。ただし、SiCデバイスのダイサイズは現在のGaNプロセスよりも小さいです。市販のSiCデバイスは、ブロッキング電圧1200Vと1700Vのものがすでに存在しており、それよりも高電圧のデバイスは、現在開発が進められています。GaNトランジスタの定格は900Vですが、2022年10月現在では1200Vです。デモ用に開発されたGaNデバイスは、SiCデバイスと同等の性能で1200Vに達しますが、市販されるのは2025年以降になりそうです。一部の予測では、2025年には1200V GaN MOSFETのコストがSiC MOSFETの1アンペアあたり16セントという予想価格よりも低くなるとしています。これは、GaNのシンプルさと低コストの基板がコストの優位性をもたらす可能性があるためです。

GaNのスケールメリットをさらに高めるため、より大きなGaNウエハーサイズを開発する取り組みが行われています。GaNに関するその他の開発には、同一ウエハー上でGaNとSiの両方をサポートするデュアルプロセスの開発などがあります。これにより、高密度デジタルエレクトロニクスをパワーエレクトロニクスや高出力RFエレクトロニクスと同じデバイス上で開発できるようになります。

 

その他のWBG半導体

 

多くの研究グループが、酸化ガリウム(Ga2O3 )や立方晶窒化ホウ素(BN)など、今後最も有望とされるWBG半導体技術の開発を目指しています(表1)。これらの材料は今日、さまざまな用途で使用されていますが、商業的に実現可能な半導体デバイスとして使用されるには、まだ長い道のりがあります。Ga2O3 の多くの材料特性はまだ解明されておらず、将来、製造に使用できるGa2O3 プロセスの開発方法に関して、現在研究が進められています。

以下のWBG半導体素子には、一般的なもののほか、将来の素子が含まれています。

  • 炭化ケイ素 (SiC)
  • 窒化ガリウム (GaN)
  • ダイヤモンド (C)
  • 窒化ホウ素 (BN)
  • 酸化亜鉛 (ZnO)
  • セレン化亜鉛 (ZnSe)
  • 硫化亜鉛 (ZnS)
  • テルル化亜鉛 (ZnTe)
  • 酸化ガリウム(III) (Ga2O3)/酸化アルミニウムガリウム(III) ((Al2Ga)2O3)
  • 酸化インジウム (I2O3)

表1:WBG半導体の主な仕様(出典:筆者)

BNはWBG半導体材料として有望であり、主にオプトエレクトロニクスや発光用途で研究されています。BNは、p-ドーピングとn-ドーピングの両方が可能な間接バンドギャップを示し、高い予測絶縁破壊電界を持ちます。また、飽和電子速度と熱伝導率も高く、既知の材料の中で最も硬い材料の1つです。予測されシミュレートされたBaligaとJohnsonの性能指数(FoM)を考慮すると、BNは電力変換や高出力および高周波デバイスに最適である可能性があります。ただし、BNのドーピング状態や実際の特性はまだわかっていません。

 

結論

 

現在、SiCとGaNが高出力と高周波の市場を牽引していますが、他のWBG半導体技術が開発され、商業的に入手可能になるまで、この状況は変わらないでしょう。このプロセスには通常10年近くかかります。したがって、今後数年間は、SiCデバイスが高電圧定格でGaNデバイスをリードし続ける一方で、SiCとGaN は引き続き成長し、中電力レベルで競争を繰り広げることが予想されます。どちらの技術もSiに比べて非常に高価であり、SiCとGaNは、Si技術では対応できない領域で競争するはずであるため、この状況は当分続くものと思われます。

 

 

 

 

 

 

 



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ジャン=ジャック・ドリル(Information Exchange Services社長)
ニューヨーク州ロチェスター工科大学(RIT)にて電気工学の理学士号、理学修士号を取得。在学中はRF/マイクロ波を研究するほか、学内雑誌への執筆、学内最初の即興コメディグループへの参加など活動多数。学位取得前から、Synaptics社のICレイアウト・自動テスト設計エンジニアとして契約。同軸内アンテナおよび無線センサ技術の開発と特性評価など、6年間の独自研究を通じて、数々の技術論文を提出、米国特許を取得。

学位取得後、キャリアを求め、妻アリーヤと共にニューヨーク市に移転。雑誌「Microwaves & RF」のテクニカルエンジニアリングエディターとして従事し、 RFエンジニアリングとテクニカルライティングへの情熱とスキルを活かし活躍。

その後、技術的に有能なライターと客観的立場の業界専門家の必要性を痛感し、RFEMX社を設立。また、この目標を達成するため、会社の対象領域とビジョンをさらに拡大し、Information Exchange Services(IXS)を設立する。


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