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疑いもなく私たちは、デストピアの時代を生きています。テクノロジーによって、もっと希望に満ちた未来が訪れてほしいと期待するのは当然なのかもしれません。特にそんな期待を一身に担っているのが、ロボットとAIです。
もちろん、「ロボットに仕事が奪われる」ということに不安を抱く人も多いことでしょう。しかし、この2年間、世界的な新型コロナウィルスの蔓延によって、サプライチェーンの崩壊、深刻な人手不足、さまざまな物流の課題に直面してきた今、人間に代わってリスクの高い仕事を引き受けてくれるロボットは、もはやそれほど恐ろしい存在ではなくなっているはずです。
実際、コロナ禍という社会状況は、ロボットの自動化を一気に推し進める最大の起爆剤になりました。また、私たちから仕事を奪うどころか、ロボットのおかげで、仕事はより安全なものになり、職場の可能性も大きく広がりました。
ロボティクスの大きなトレンドの1つに、人目を引く技術ではありませんが、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)があります。RPAは、現在、採用する企業が急増しており、基本的には、ロボット(と言うよりも、ソフトウェアの「ボット」)が、スケジュール予約、在庫確認、請求処理のような、人間ならば死ぬほど退屈するような繰り返し作業を代行してくれます。
また、ブルーカラーの仕事をこなすロボットもあります。いわゆるスマートファクトリーロボットですが、こちらも人気が急激に高まっています。パワー、作業効率、作業スピードのいずれにも優れ、作業精度はほぼ完璧に近いほか、昼休みや病欠を取る必要もなく、何よりも作業現場でコロナウィルスを人にうつす心配もありません。
「倉庫や物流センターでの自律走行搬送ロボットの活用によって、企業は高まるネット販売の需要に応え、人手不足に対応することができました」と、自律化のためのロボット運用プラットフォームを提供するInOrbit社のCEO兼共同創業者、フロリアン・ペストーニ氏は語っています。
ペストーニ氏によれば、倉庫やサプライチェーンの課題を解決するために企業は今後もさらに多くのロボットを投入することが予測されます。しかし、これは単に同じロボットの数を増やしたり、同じ作業を行う自律動作ロボット(AMR)を製造するメーカーが次々と市場に参入してくるということだけではありません。
「掃除ロボット、消毒ロボット、在庫管理ロボット、ドローンなど、倉庫内の業務を行うロボットを連携させるマルチロボットシステムが登場します」とペストーニ氏は言います。この新たな波に備えるために「企業は、互換性のないソフトウェアやサイロ管理によってロボット同士が会話できないという状況に陥ることなく、システムを確実に統合できなければなりません。」
ロボットの活躍の場が広がっているのは工場だけではありません。ロボットは小売業界でも流行しており、その最新トレンドが「コボット」です。これは、高感度センサを満載し、「感じる」ことがでる多目的協働ロボットで、人間と一緒に安全に作業ができます。
こうしたロボットと作業をするのは想像以上に快適です。例えば、コボットは、子どもにぶつかるなどの外的要因によって、行っている作業を中断されると、そのまま安全モードに入ります。従来の旧式のロボットは、ただひたすら作業を続けるので、近くを通った人に怪我を負わせてしまうこともありました。でも、コボットならその心配はありません。また、産業用ロボットに比べて比較的価格も安く、人間と一緒に働けるよう設計されており、力仕事はもちろん、健康や安全上のリスクのある、本来、人間が行うべきではない仕事もこなしてくれます。
コボットの開発メーカーは、意図的にプログラミングしやすく、使いやすいようにコボットを作っています。ですから、ロボット工学について何年も、あるいは何カ月も学習しなくても、思い通りの作業をさせることができます。中には、手足を「ドラッグ & ドロップ」するだけでさまざまな動きをし、後でその動きを自分で繰り返すことができるコボットもあります。
「オートメーションとロボットがますます私たちの生活に溶け込んでゆく中、未来の仕事には、これまで考えてもみなかったような役職も生まれます」とペストーニ氏は指摘します。物理的なロボットはクラウドベースのソフトウェアで制御(いわゆる、ソフトウェア定義 (SDx))されるようになり、そのうち「ロボッター」という新語が生まれると言います。
「ロボットは、小型機器、機械、輸送などの機能を強化し、食糧の取り扱いを効率的かつ経済的に行い、新規事業に大きく貢献しています」と語るのは、Tech Guided社のチーフコンテンツストラテジスト、ブレント・ヘイル氏です。「21世紀が素晴らしい進歩と大きな飛躍をもたらしたことはもはや否定できません。携帯電話の出現とその普及、AIの驚異的な進化、機械工学の進歩、独自のイノベーションなど、過去数年間に、驚くほど革新的なアイテムが開発され、私たちの生活はより便利でより快適になりました。」
しかも、ロボットは単純労働を行うだけでなく、ますます賢くなっています。AI革命によって、AIロボットが登場し、ロボットは機械学習によって仕事をしながら学習していきます。データを集めれば集めるほど、ロボットはより賢く、より効率的になり、活躍できる業界の幅も広がります。また、子どもたちへの対応にも長けています。
最近、AIロボットが自閉症の子どもの社会的スキルを向上させ、アイコンタクトなどを支援する最新技術として注目を集めています。専門家によると、ヒューマノイドは人間の姿形を持ちながらも、批判的態度を取らないので、特に子どもとの対話に有効であると言います。
その他にも、学習障害を持つ子ども、聴覚障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもにもAIロボットは役立っています。ロボットは非常に忍耐強く、子どもの必要に対応することができるからです。
ロボットが癒しとなり、助けとなるのは子どもだけではありません。高齢者にとってもきめ細かく、親身なケアパートナーになります。
「ElliQ」は65歳以上の高齢者向けに開発されたロボットで、同居型のウェルネスコーチや健康管理パートナーのような存在です。薬を飲む時間を知らせ、健康状態をチェックするほか、心と体のエクササイズの指導、健康目標の設定と追跡、大型病院の健康情報へのアクセス、「Uber Health」による交通手段の手配、ビデオ通話、口述筆記、音楽など、その他多くのことを提供します。初期の研究によると、ElliQの高齢者ユーザーは、ロボットの提案を60パーセント受け入れ、そのうちの94パーセントの人が提案された活動を完了しています。AIと機械学習(ML)によって、ロボットはユーザー個々のニーズを学習し、その人に合った提案をし、必要な機能を提供するのです。
そのほかにも、家庭用の自律走行搬送ロボット(AMR)は、体に障害がある人を介助するよう設計されています。AMRの中には、自律的に移動し、数フィートごとに高さ調節をしながら、約11kgの重さの物を持ち上げたり、運んだり、回収したりすることができるものもあります。しかも、トレイを持って、高い棚から物を取りながら、オーディオブックを読み上げたり、クロスワードパズルを手伝うこともできるのです。
「機械工学の進歩によって、映画の中の空想の世界が現実となり、ロボットは信じられないほどの仕事をこなし、私たちの住む世界を大きく変えています」とヘイル氏は言います。
確かに、ロボットがバリスタとしてコーヒーショップに登場するのもそう先の話ではないかもしれません。今年のラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で来場者の注目を集めたのは、2本の多関節アームでコーヒーを一から淹れるロボット「ADAM」でした。豆を挽き、お湯を沸かし、牛乳を入れ、温めたスチームミルクを注ぎ、その上にチョコレートパウダーをかけると、最後に、出来上がったコーヒーを客の元に運んでいきます。ADAMのようなロボットは、理論的にはバーテンダーやファストフード店員になることも可能ですし、厨房ではさらに大きな活躍が期待できます。
また、今年のCESに出展した韓国のスタートアップ企業は、わずか48時間で新しいレシピを習得できるというシェフロボットを展示しました。このAIを搭載したシェフロボットは、誰でも同じ料理が作れるよう料理の「民主化」を目標に掲げ、人間の熟練シェフが作った料理の食感や味をそのまま再現します。
「街を歩いていると、店でも職場でも、以前よりもロボットが働いている姿を目にするようになりました」とパストーニ氏は言います。クラウドベースのソフトウェアでロボットを制御する「ロボッター」が登場すれば、どこにいるかは関係なく、世界中どこにいてもネットワーク経由でロボットにつながることができると指摘します。
最後にパストーニ氏はこう述べます。「こうして労働力の供給が民主化されて、誰もが労働力を得ることができ、誰もがロボットのボスになれる世界が到来するのです。」
確かに、心の底では、誰もがボスになりたいと思っているはずです。
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