テクノロジーにおける小型化の未来を探る
このコンテンツでは、「小型化」という技術テーマについて、記事、ビデオ、インフォグラフィックを通じ、Molexの注目製品と合わせて解説し、つながる未来を切り拓く最先端の動向を掘り下げます。まず、最初の記事「コネクタの小型化でより大きな技術進歩へ」では、モノの小型化の背景にある原動力を探り、その歴史をたどりながら、コンポーネントの小型化が進むさまざまなアプリケーションを紹介します。また、この小型化はどこまで進み、コネクタの小型化の未来はどうなるのでしょうか。小型化の動向を伝えるビデオでは、最新の開発に関する概要と洞察が素早くご確認いただけます。
記事「小型化と電力管理」では、大きく視点を変えて、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の世界に飛び込み、AR・VRハードウェアの未来を探ります。また、医療・消費者向けウェアラブルに関する記事では、テクノロジーと医療の融合について考察し、遠隔患者モニタリングから、パッチ、リング、衣類などの次世代ウェアラブルに至るまで、ヘルスケアの動向を幅広く取り上げます。インフォグラフィックでは、小型化技術の鍵に迫り、小型コネクタの製造方法、小型コンポーネントの組み立ての課題について詳しく解説します。
さらに、2部構成の記事では、ミリ波アプリケーションの高周波の世界を取り上げます。5G展開の現在の状況と次世代モバイル機器への影響に目を向け、ADASシステムなどのさまざまなアプリケーションにおけるミリ波センサの複雑な領域に焦点を当てます。最後に、当コンテンツを締めくくる記事として、IoTをテーマに、その現状を解説しながら、センサノードの小型化について掘り下げます。IoTアプリケーション開発を促進するZero-Hachi 0.80mmピッチコネクタシステムやモジュラー式のOneBlade 1.00mmピッチ電線対基板用コネクタなどの注目製品も紹介します。
コネクタの小型化でより大きな技術進歩へ
ジョン・ゲイベイ(マウザー・エレクトロニクスへの寄稿)
小型化の流れは何千年にもわたって続いています。古代の人類は生き残りをかけて移動するとき、道具を作り最適化することを学びました。道具の機能性や信頼性を保ちながら、小さく、軽くすることは古代から重要だったのです。このプロセスは今も続いています。
現代の電子機器は一世代で見事な小型化を遂げます。かさばる真空管や変圧器からソリッドステート回路やスイッチング電源に至るまで、性能を維持・向上させながらデバイスを小型化する能力は、ほぼすべての民生品、消費者製品、航空宇宙・防衛製品にとって重要な強みでした。
集積回路の機能密度は、半導体の形状がいかに回路密度を100万倍に高めたかを示す典型例です。例えば、以前のスタティックRAMは、256ビット×4ビットのメモリを格納するためにDIPパッケージを使用していました。最新のRAMは、ギガビットのメモリをより小さなマイクロ表面実装パッケージに格納しています。これにより、デバイスの小型化、そして機能性と相互接続性の拡張への扉が開かれました。
接続技術も進化が求められました。昔の大きくてかさばるデバイスには、大型のコネクタを使用できるスペースが十分ありましたが、もうそんな余裕はありません。最近のデバイスは、より小型のマイクロサイズコネクタのマルチポイント接続を使用し、パッケージの小型化が進んでも比較的大容量の電力と信号速度を処理しています。この流れは止まらないでしょう。
トレンドを注視する
最初の重要な電気接続の小型化は、機械式腕時計からデジタル腕時計への移行時に起こりました。小さなボタンはもちろん、電池も、すでに小型化されていた電池ホルダーも小さくしなければなりませんでした。コンタクトは金属板からワイヤに変わり、精密ハウジングに収められ、素材の弾性を利用してバネと電気接点を動作させました。
こうした旧式の小型コネクタやスイッチは信頼性が低く、たまに軽く振ったり、叩いたりして接触させる必要がありました。今のように材料科学が進化していなかったため、酸化や汚染も問題でした。小型防衛用機器のように高い信頼性が求められる用途では、贅沢にも錆びない金のコンタクトが使用されていました。一方、ほとんどの消費者向け製品は、銅、アルミニウム、鉄のコンタクトを使い続けました。これらはいずれも湿気と経年劣化で腐食や酸化が発生する素材です。
タワー型パソコンがノートに、そしてタブレットやスマートフォンに移行するのに伴い、小型化するスイッチとコネクタも改善されました。より良質の金属を使い精密性が向上したことで、コネクタの信頼性は大きく向上しました。USBからミニUSB、マイクロUSBへの小型化がその良い例です。USB 3、特にUSB 3.1Cの採用により、かつてはかなり大きな極性4ピンコネクタであったものが、最大125ワットの電力を持つ無極性20ピンコネクタになりました。それまで12メガビット/秒だったスループット容量は、10ギガビット/秒に向上しました。これは決して容易なことではありませんでしたが、Molexをはじめとするコネクタメーカーが数々の接続関連技術の道を切り開きました。
医療機器技術もその重要な例です。従来の腕時計が、今ではフィットネストラッカー、ヘルスモニター、ウェアラブル医療機器になりました。例えば、処理モジュールと医療センサ間の接続には、埋め込み型または皮下血糖値センサへのワイヤのようなシングルポイント接続、もしくは心電図心拍数モニタのようなマルチポイントコネクタを使って、致命的な症状が出る前に病気を発見することができます。
すべてのウェアラブルや埋め込み型医療機器コンポーネントがPCBや基板に接続できるわけではありません。例えば、投薬用医療機器は、自動注射器と患者へのアラーム装置を超小型コネクタで接続する必要があるもしれません。デバイス、コネクタ、および関連部品は、患者が着用を嫌がらないように小型化する必要があります。
もう一つの重要な例に、補聴器があります。補聴器は超小型回路を電池や充電ポートだけでなく、鼓膜を刺激するトランスデューサにも接続する必要があります。多くの場合、患者は補聴器を着けていることを人に気づかれたくないものなので、サイズを極力小さくし、快適性を確保しなければなりません。コネクタとワイヤの素材も人体に安全で非アレルギー性でなければなりません。
ワイヤレス技術が設計に与える影響
ワイヤレス技術の爆発的な普及は、多くの電子システムの設計に劇的な影響をもたらしました。ワイヤレスリンクによって、外付けケーブルとコネクタの必要性が減った分野もありますが、それによって新たな課題も生まれました。
アンテナを例に見てみましょう。従来のアンテナにはBNCコネクタと太い同軸ケーブルが必要でした。やがてRF信号の波長がミリメートルサイズに縮小され、その結果、PCBに実装可能なアンテナが多数登場しました。ただし、PCBに実装したアンテナでは最適な性能が得られない可能性があります。この結果を受けて登場したのが、Molex SMP-MAXおよびSMP-MAX EVO 50Ω RFコネクタなどの超小型RFコネクタです。これによって、小型PCB SMT実装50Ωプラグデテント接続が外部アンテナに提供され、最適な性能が得られるようアンテナを配置できるようになりました (図1)。
さらに、このコネクタは、一度に複数のRFリンクを使用する場合によく使用されます。パッシブ相互変調は、キャリアアグリゲーションで望ましくないソースから干渉が生じたときに発生します。「錆びたボルト効果」とも呼ばれる現象ですが、コネクタの小型化が進めば、設計者はさまざまなRFソースが干渉しないように、柔軟に配置できるようになります。
その鍵はMIM
製造技術は、希望通りの性能を発揮する小型の接続技術を提供するために、適応する必要がありました。旧来の鋳造成形されたハウジングと大ぶりのインサートピンはもう使えません。Molexをはじめとするメーカーは、先駆的に金属射出成形(MIM)技術を開発し、表面の仕上がりと耐食性を向上させました。この新しいシングルモールド加工は、精密な穴と形状を持つ複雑な輪郭に対応し、高温導体の使用が可能になります。これは航空宇宙はもちろん、自動車にも重要です。
最新の自動車アプリケーションは、大いに接続の小型化の恩恵を受けています。エレクトロニクスは至る所にあり、フライ・バイ・ワイヤのネットワーク技術はCANネットワークから100Mbit/秒イーサネットネットワーク(IEEE 802 TSN)に進化しました。既存のRJ-45コネクタを使用した有線イーサネットでは、もはや対応できません。RJ-45コネクタは大きすぎるうえに、振動に弱く、環境的に密閉されていません。その結果、2線式ツイストペアケーブルを用いた車載イーサネットが、新車の主流となり、新たな標準となってます。
自動車のサブシステムには、精密なPCB実装2線式イーサネット接続が必要であり、そのケーブルは丈夫で、耐久性が高く、耐環境性を備えていなければなりません。例えば、Molex HSAutoLink I 薄型コネクタシステムは、信号線の周りに完全に保護されたシールドケースを備え、デバイス側の省スペース化を実現します (図2)。このコンパクトなコネクタには、正しく組み立てられるよう複数の極性と色分けのオプションが用意されており、車の製造・整備経験者はこの機能を高く評価するでしょう。
次世代の車載信号システムでは、狭いスペースでの通電容量など、多くの設計上の課題が伴います。考えてもみてください。これまで機械レベルで制御されていたエアフローが、今では自動車のスーパーコンピュータに接続され、ネットワーク化されたプロセッサ、センサ、アクチュエータによって制御されています。Molexは大電流を伝送する配線ハーネス端子のサイズを標準的な1.5mm² からわずか0.13mm²に小型化しました。低電流端子も0.64mm² から0.5mm²に縮小しています。
すべての中心に
接続の小型化が鍵を握る非常に重要な分野に、データセンターがあります。データセンターには、大量の光ファイバと銅ケーブルで接続された膨大な数のサーバーラックが収容されています。データセンター施設には、電力使用量、メンテナンス、トラフィックフロー、冷却など、気が遠くなるような多くの要求があります。ケーブル密度は非常に高くなければならず、光ファイバモジュールは過熱することなく確実に動作しなければなりません。
サービス技術者は、機器を1つ交換する場合でも、単二重、全二重、シングルモード、マルチモードのコネクタをすばやく見つけて識別し、簡単に抜き差しできる必要があります。
この分野をリードするのが、Molexの次世代のマルチポジション高密度光ファイバインターフェイス・カセット型コネクタです。Molex ラックマウントLGXファイバエンクロージャおよびカセットは、シングルモード24ポジション光ファイバコネクタで、コンパクトなフォームファクタでLCからMTP/APCへ変換します (図3)。
可能な限り小型化された123.4×105×28.8mmのフォームファクタは、バックエンドで2つのMPOアダプタを備えた24の入力接続を収容します。内部には2X LCTO 12 MPOファンアウトアセンブリが格納されています。これにより、機器メーカーは高密度のファイバ接続を搭載し、同じスペースにより多くのポートを提供することができます。
Molexは、光ファイバコネクタとアダプタに加えて、ケーブルアセンブリ、ファイバガイド、光増幅器、波長選択モジュール、光トランシーバも提供しています。
まとめ
デバイスはますます機能性を高め、小型化しています。そのことがデバイス設計者と接続設計者に課題をもたらしています。機械はますます複雑になっており、ワイヤレス接続は相互接続の問題を軽減していますが、自動車、ファクトリーオートメーション (多数のセンサやアクチュエータが組み込まれている)、医療、通信といったアプリケーションでは、より優れたソリューションを提供することがメーカーに求められています。Molexはじめとするメーカーは、このような課題に取り組み、問題に対応する画期的な新製品を提供しています。
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小型化と高性能が融合するアプリケーション トップ5
小型化と電源管理:次世代VRハードウェアの構築
カッシアーノ・フェロ(マウザー・エレクトロニクスへの寄稿)
仮想現実(VR)は仮想空間の中で没入感のある魅惑的な体験を作り出します。VRによって私たちとデジタルコンテンツとの関わり方は一変しました。しかし、その息をのむような体験の背後には、高解像度ディスプレイ、高精度なトラッキングや強力なレンダリング技術、グラフィックス・プロセッシング・ユニット (GPU)、効率的なデータ、熱伝達技術、小型化など、数々の複雑なエンジニアリング技術が活用されています。
この記事では、魅力的ながら難易度の高いVRハードウェア・エンジニアリングの世界に踏み込んで、 高効率で軽量な小型ヘッドセットに採用されているテクノロジーを考察します。
光学素子とディスプレイシステム
VRヘッドセットは、高解像度ディスプレイと光学素子を使用して、没入感のある仮想体験を作り出します。こうした装置は現実の奥行知覚を模倣した3次元映像を表示し、ユーザーはそれを見ると仮想現実の世界に飛び込んだような感覚になります。
VRハードウェアの小型化では、光学素子とディスプレイシステムの最適化が極めて重要です。ヘッドセットのサイズ、重量、消費電力を抑えながら、高解像度ディスプレイを維持するのは容易ではありません。それには画素密度の高い小型化OLEDやLCDパネルのようなディスプレイ技術が必要です。ナノテクノロジーは、VR用のディスプレイ技術の進歩のため、とりわけ解像度を上げる際に極めて重要な役割を果たします。ナノテクノロジーによって画素縮小が可能になり、その結果、画素密度が上がり、画像がより鮮明になります。また、VRには5Gなどの要求の厳しいデータ転送プロトコルが必要ですが、こうしたプロトコルもナノテクノロジーの進歩に大きく依存しています。
サイズ的な制約に対応するため、エンジニアたちは広い視野を保ちながら光学システムを縮小することに力を注いできました。非球面レンズなどの先進的レンズ設計技術は、光学素子の物理的サイズを最小限に抑えながら、広視野(FOV)を実現するのに役立ちます。さらに補正アルゴリズムも幾何学的歪みを補正し、画面全体の画像品質を確保する際に重要な役割を果たします。
被写体ブレの抑制もVRハードウェアの課題です。頭を動かしているときに被写体のブレを最小限に抑えるには、ディスプレイのリフレッシュレートを上げ、ディスプレイ技術の応答時間を最適化します。動きベクトル予測やフレーム補間といった先進的なモーション補間技術を使うと、さらに視覚体験の向上が図れます。
小型VRヘッドセットをかけたときに見えるピクセルの網目 (スクリーンドア効果 (SDE) )には、画素密度を高めサブピクセル配列を向上させるディスプレイ技術で対応できます。また、画素間の隙間を見えにくくして、全体的な映像品質を向上させるには、ディフューザーや反射防止コーティングなどの光学フィルターが有効でしょう。
トラッキングと位置精度
VRハードウェアセットにはトラッキングシステムも欠かせません。ただし、トラッキングコンポーネントのサイズとパワー要件を最小限に抑えつつ、ユーザーの動きを正確に捉えるのは非常に困難でした。
従来のトラッキングシステムはアクティブ赤外線 (IR) 方式とレーザー方式を採用しています。アクティブIR方式のトラッキングでは、光源から赤外線を照射し、センサでユーザーの頭部に付けられたマーカーやペリフェラルからの反射光を検出します。一方、レーザー方式のトラッキングシステムでは、レーザーとセンサを使って、光線がマーカーに当たって帰って来るまでの時間を測定することで、正確な動きを追跡します。ただし、こうしたシステムを小型ハードウェアに適応させるには、センサの小型化と省エネ設計の進歩が必要です。
また、精度を向上させ、遅延を短縮するには、センサを統合し、複数のセンサのデータを結合することが不可欠です。センサ機能をコンパクトなフォームファクタに統合すれば、トラッキングシステムの全体的なフットプリントも最小化できます。そして予測とフィルタリングのアルゴリズムを活用すれば、動きをなめらかにし、リアルタイムの応答性を確保するのに有効です。
センサとマーカーの間に見通し線を遮る物体があり、トラッキングが不正確または不可能になる場合は、オクルージョンへの対応も必要になります。これらの問題を最小限に抑えるには、センサ統合、逆運動学、センサフュージョンといった技術を採用するとよいでしょう。
VRでは、センサの限界、較正要件、環境要因、システム遅延などが原因で、正確な位置精度を確保するのが困難な場合があります。詳細で正確なトラッキングにはセンサの解像度と精度が重要な一方で、較正技術もセンサとマーカーを調整して精度を高めることができます。さらにセンサフュージョンを行って、複数のセンサからのデータを結合すれば、位置トラッキングの最適化も可能です。
グラフィックス・プロセッシング・ユニット (GPU) とレンダリング技術
GPU技術の進歩によって、VRシステムはより高いレベルに到達しました。こうした改善には、例えばフレームレートの向上と遅延の低下がありますが、これは複雑なタスクを小さなサブタスクに分割し、複数の並列処理ユニットで同時に実行することで達成できます。GPUの性能は、アルゴリズムやシステム構成の微調整など、最適化技術によってさらに改善でき、効率を最大限に高め、処理オーバーヘッドを削減することができます。
非同期タイムワープ (ATW) と非同期スペースワープ (ASW) は、なめらかで没入感のあるVR体験を確保するために使用されている技術です。ATWは頭の動きを予測し、予測に従って先にレンダリングしたフレームをタイムワープさせることで視覚ラグを減らします。ASWは頭と手の動きに基づいて中間フレームを推定することで、遅延を減らし、システムの応答性を向上させます。
没入感のある視覚を生み出すリアルタイム・レンダリング・アルゴリズムも、VRの質をさらに高めます。このアルゴリズムは、物体とそれを見る人の距離に基づいてオブジェクトの詳細度を調節する詳細度 (LOD) 管理などの技術を利用し、計算資源を効率的に使用します。オクルージョンカリングも、見えないオブジェクトをレンダリングする必要性をなくすことで、不要な計算処理を減らすために使用されています。さらに、動的ライティング/シェーディング技術によって、本物のような光の状態を再現し、より自然に見える仮想環境を作ります。
接続とデータ転送
VRシステムは、物理的な接続を使用せずにデータを伝送する場合、Bluetooth®やWi-Fi®といった無線通信プロトコルに依存します。シームレスな体験には、低遅延と高帯域幅が不可欠です。さらに、干渉軽減とサービス品質(QoS)技術は、重要なデータを優先し外部信号の影響を最小化することで、強固な無線通信回線の維持を支援します。
使用中に中断やドロップアウトが発生するのを防ぐには、良好なシグナルレンジと安定した接続が必要です。そのため、安定性が接続の信頼性を意味する一方で、シグナルレンジは送信側と受信側の最大距離を決定します。
ナノテクノロジーは、プロセッサと入力環境のギャップを埋めることで、多様なVR素子間にシームレスで応答性の高い通信を確立する上で極めて重要な役割を果たしています。さらに、データ圧縮技術を使用すれば、無線チャンネルで伝送されたデータ量を最小化することができます。非可逆圧縮は細部に犠牲にして圧縮レートを高めますが、可逆圧縮は元のデータをすべて維持します。また、適応圧縮は利用可能な帯域幅と品質要件に基づいて圧縮レベルを調節します。
VRでは、リアルタイムのインタラクションを維持するために、データの圧縮・解凍処理中の遅延を最小化するのも容易ではありません。この問題を緩和するには、バッファリングと補間技術でデータ転送速度のばらつきを抑えながら、タイムスタンプなどの同期方法でデバイス間の正確なタイミング調整を行います。
電源管理と放熱
バッテリ寿命を最大限に伸ばし、VRヘッドセットの電源負荷を低減できるかどうかは、電源効率技術にかかっていますが、ナノテクノロジーを活用すればそれを強化することができます。これには、エネルギー効率の高いコンポーネントを慎重に選び、電圧スケーリング、クロックゲーティング、動的電源管理などの電源最適化手法を実装することが含まれます。ナノスケールの材料と構造は、消費電力のより適切な管理とエネルギー損失の最小化を可能にし、電源効率を改善することができます。
さらにVRヘッドセットはかなり高温になるため、動作時の熱管理が極めて重要です。ナノテクノロジーは、効率的な熱分布と放熱を促す先進的素材とデザインを提供し、熱管理に貢献します。ナノスケールの特徴を活かして熱拡散技術、換気システム、エアフロー機構を強化すれば、放熱性が向上し、最適な性能を維持できます。
ナノテクノロジーによって、異なるコンポーネント間の伝熱を向上させる熱伝導材料を開発し、全体的な冷却処理を最適化することも可能です。さらに、ナノセンサをVRヘッドセットに組み込めば、正確な温度モニタリングと制御が可能になり、冷却機構を安全な温度範囲内で運転させることができます。
ハードウェアの小型化と携帯性
高性能のポータブルVR機器の開発は、コンポーネントのナノスケール化と人間工学的向上を伴う複雑な作業です。この分野が大きく進歩したことで、幅広いユーザーがVRを利用しやすくなり、快適に体験できるようになりました。
小型化
コンポーネントの小型化、特に微小電気機械システム(MEMS)技術の進歩は、VRハードウェア技術において極めて重要な役割を果たしています。加速度センサ、ジャイロスコープ、地磁気センサなど、センサがより小さくなり電力効率が向上したことで、コンパクトなVR機器内で正確なトラッキングが可能になりました。さらに、VRハードウェアを携帯し、より長時間使用できるようにするには、バッテリの小型化も欠かせません。光学素子とレンズシステムも改良され、その結果、高品質でより小型・軽量なレンズが誕生しています。
Molex Quad-Row基板対基板コネクタ
VRデバイスを小型化する際、極めて重要なのは、コンパクトな電気回路を実現できるコネクタを使用することです。Molex Quad-Row基板対基板コネクタは、こうした要件に対応し、スペースに制約があるさまざまなアプリケーションに省スペースソリューションを提供します (図1)。従来のコネクタに比べて30%のスペースを節約します。高さ0.60mm、幅2.0mmで、インサート成形されたシールドロッド設計を採用し、内部カバーの堅牢性と保護を実現しています。
Quad-Row基板対基板コネクタは、電気的性能の面では、超コンパクトなパッケージで3.0Aの電流に対応し、安定したパワーを保証します。最大50V対応で、耐電圧250V、絶縁抵抗100MΩです。さらに、この4列コネクタはLCP UL 94V-0材質を使用し、優れた強度と耐熱性を備え、-40°C~+85°Cの広い動作温度範囲に対応します。
このように、Molex Quad-Row基板対基板コネクタは、VRハードウェアに適応性のある柔軟なソリューションを提供します。ナノテクノロジーの利点を活かしてVRを開発するなら、このコネクタでスペースを節約し、必要な信頼性と性能を維持することができるでしょう。
統合システムオンチップ(SoC)
統合システムオンチップ(SoC)回路も、プロセッサ、GPU、メモリ、センサをシングルチップに統合するために採用されています。SoCを使用することで、消費電力と性能を最適化することができます。
軽量素材
重量の最小化とVRヘッドセットの使用感の向上には、高機能ポリマー、織物、繊維といった軽量素材も貢献しています。エンジニアはこうした素材によって、人間工学と快適性の側面に対応することができます。つまり、重量配分、調節可能ストラップとインターフェイス、通気性、放熱、ユーザーインターフェイスのデザインを考慮して、快適で没入感のあるユーザー体験を実現します。
総合的に見て、小型化、軽量素材、人間工学に基づいたデザインの進歩は、VRハードウェアの設計を大きく前進させました。AppleのVision Proは、いかにしてVRテクノロジーを小型化し携帯性を高めるかを示す見事なお手本です。ユーザーはデジタルコンテンツと周囲環境に溶け込み、目と手、声だけで簡単に操作できます。しかも3Dグラスとアルミフレームを組み込んだ丈夫なデザインで、顔に心地よくフィットします。
まとめ
VRハードウェア・エンジニアリングには、光学素子やディスプレイシステムをはじめ、トラッキング精度、GPU性能、接続、電源管理、放熱にいたるまで、多くの困難な課題があります。ナノテクノロジーは、これらの課題に取り組む上で、特にディスプレイ技術、データ転送プロトコル、省電力化の進歩において極めて重要な役割を果たしています。ナノスケールの素材と構造を活用すれば、VRヘッドセットの解像度、電力効率、熱管理を向上させることができます。VR技術が進化し続けるなか、ナノテクノロジーとエンジニアリング手法のさらなる進歩は、これからも仮想現実の領域において可能性の限界を押し広げるでしょう。
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ビッグデータを用いた医療改革
アレックス・プルーマ−(マウザー・エレクトロニクスへの寄稿)
医療用ウェアラブルは新しい技術ではなく、医師はすでに数十年にわたり、不規則な心臓活動や不整脈を監視する診断ツールとして遠隔心臓モニターを使用してきました。患者が日常生活を送る中で長期間にわたって収集されたデータは、診察室で1時間で収集できるデータよりも高い診断価値があります。その結果、無線通信機能を備えた遠隔心拍数モニターは標準診療として処方されるようになりました。
この技術は誕生以来進歩を遂げ、現在ではデータをモバイルアプリ経由でクラウドに送り、モニタリングとアルゴリズムによる解析を行い、将来の心臓発作を予測し、未然に防ぐのに役立っています。ウェアラブル医療技術の本格的な革命は、Apple Watch、Fitbit、Oura Ringなどの民生品市場で起こっています。こうしたデバイスはファッションアクセサリのような外観で、心拍数、体温、血圧、血糖値といったバイタルデータを測定することができます。これら以外にも、一般向け医療用ウェアラブルの人気の機能として、運動量の追跡や睡眠モニタリングなどがありますが、それには運動および位置追跡機能が必要です。次に来るウェアラブル技術は、軽量性と柔軟性を高め、特殊設計の衣類に織り込むことが可能になるでしょう。ひょっとすると、お気に入りの着古したスウェットシャツにも織り込めるようになるかもしれません。
データ収集
一般に販売されている医療用ウェアラブルは、フォームファクタはそのまま(またはさらに小型)でますます高機能になり、心拍数、血圧、体温のモニタリングだけでなく、動きの検出と数値化 (歩数計)、睡眠サイクルの長さと深さの測定、血糖値スパイクの検出も可能になっています (図1)。このような種類の異なる可変健康データを測定するには、多くのセンサが必要です。例えば、体温と心拍数を測定するのは比較的簡単ですが、より複雑な機能にはより高度な技術が必要です。
フィットネストラッカーは、散歩や日常生活のなかで歩いた歩数を計測しますが、歩数の計測はただ位置を追跡すればよいというものではありません。歩数計は、自力運動と車や飛行機などによる他力運動を区別しなければなりません。
通常、フィットネストラッカーは加速度センサを採用し、人が歩くときに自然に生じる速度変化を測定し、足踏みや手を振った時に生じる加速を無視します。他にも、モーションセンサを加速度センサの代わりに、または加速度センサと組み合わせて使用する歩数計があり、これらは人が足を踏み出すときの腰の動きを検出します。
睡眠パターンのモニタリングも動きを測定しますが、睡眠時の動きはもっと微妙です。スマート機器は、加速度センサのように動きの変化を計測するアクティグラフ装置を採用し、心拍数モニタと皮膚温コンダクタンスを組み合わせて、ユーザーの睡眠状態、睡眠の長さと深さを測定します。これまで睡眠研究は実験室のような管理された環境で行われてきたため、患者が監視下で睡眠中に収集できるデータしか得られませんでした。リモートモニタリングによって、医師と研究者は患者のスマートウォッチアプリを確認すれば、患者がどの程度よく眠っているか判断できるようになりました。
データ分析
もし研究者が散在するデータポイントからデータを集めて整理し、結論を導き出していたら、睡眠モニタリングははるかに難しかったでしょう。幸い、現代の医療用ウェアラブルはアルゴリズムを採用して生データを処理し、健康問題が生じている(または生じようとしている)可能性があれば、ユーザーや医療関係者に警告することができます。医療用ウェアラブルは、一般にオンボードプロセッサを搭載していません。つまり、データを中央処理装置に送信しないと、照合と分析ができません。通常、最新の医療用ウェアラブルはモバイルアプリ経由でクラウドに接続します。アプリはデバイスから直接データを受け取ってクラウドに中継し、データはクラウドで処理されます。
例えば睡眠モニタリングでは、アルゴリズムがさまざまなセンサからの生データを取り込んで、ユーザーの睡眠パターンの全体像を描きます。レム睡眠中は、身体の小さな動き、心拍数、体温が、それ以外の時間帯よりも明らかに大きくなる傾向があります。データ分析で大半の処理を行わないと、これほど大規模にすべてのデータポイントを一つの明確なイメージにまとめるのは不可能です。この種のデータ分析は、ユーザーの現在の健康状態を知らせるだけでなく、将来の予測にも役立ちます。時間をかけて心拍リズムの変化を測定すれば、心臓発作や脳卒中の予測に役立ち、体温の変化を測定すれば、脱水や熱中症の防止に役立ちます。各ユーザーに適用されるデータアルゴリズムが増えるほど、将来の健康問題の可能性をより的確に予測できるようになります。
医療用ウェアラブル市場
一般向けに販売されている医療用ウェアラブルの市場は、過去5年間に爆発的に拡大し、アメリカではその大半をスマートウォッチとフィットネストラッカーが占めています。さまざまな推計がありますが、運動中または日常生活でスマートウォッチかフィットネストラッカーを着用しているアメリカ人は8,000万人から1億人いると言われています。ベビーブーマー世代の高齢化が進み、高齢者向け遠隔医療が標準診療となるなか、心拍数モニター、血圧計、心電計といった家庭用医療機器の人気も高まっています (図2)。
今後の医療用ウェアラブル市場は、衣類などのスマートテキスタイルやアクセサリが主流になるかもしれません。ナイキやアディダスのようなスポーツ用品メーカーは、心拍数、血中酸素濃度、消費カロリーなどの健康指標をモニタリングできるTシャツ、プルオーバーシャツを開発しているようです。携帯電話やMP3プレイヤーのように、技術の進化に伴って医療用ウェアラブルも小型化し、邪魔にならなくなるでしょう。未来の医療用ウェアラブルは、普段着やジュエリー、ベルト、メガネなどのアクセサリと見分けがつかなくなるかもしれません。
Future Market Insightsによると 、アメリカの医療用ウェアラブル市場は2023年に約590億ドルに成長し、今後10年間、ほぼ6倍の3,700億ドルに成長すると予想されています。おそらくその成長の大部分は、スマート機器とフィットネストラッカーを予防的ヘルスケアツールとして取り入れる若いユーザーに牽引されるでしょう。日常的な活動のリモート化が進むにつれ、実際に病院を訪れることは少なくなるでしょう。自宅や職場で予防的な健康管理を自分でもっと行えるようになれば、より健康になりす。一般に臨床現場で行われている診断業務の多くを医療用ウェアラブルが担う、そんな世界を想像するのは難しくありません。
まとめ
デバイスを装着すれば、病気や健康問題を未然に教えてくれる、将来の医療用ウェアラブル技術はまるでSFのようです。2019年、ミシガン大学の研究者たちは 、少量の血液サンプルから循環腫瘍細胞をスクリーニングし、血中の癌細胞を検出するブレスレット型のデバイスを開発しました。研究者たちは、長期的にフィットネスモニターから収集した膨大なデータポイントを使用して、患者の歩行ペース、足取り、動きの変化を検出し、アルツハイマー病、パーキンソン病などの変性神経疾患を予測するアルゴリズムを開発することができます。医療関係者は、深刻な健康被害をもたらす可能性のある基礎疾患を発見し、特定できるようになることを夢見ています。
医学研究者たちは、心臓発作、脳卒中、あるいは死に至る可能性のある潜在的に深刻な状態を検出するために、ウェアラブル・バイオセンサを実装した非侵襲的診断機械学習ツールを開発しました。ある種の心臓疾患は、症状が極めて散発的であるため、診察室で見つけるのは困難な場合があり、その結果、より深刻な問題を発症するまで見過ごされることがあります。常時モニタリングを行う医療用ウェアラブルによる早期発見法は、その方法でなければ決して発見されない疾患を検出できるかもしれません。
1Future Market Insights, “Smart Wearables Market,” Future Market Insights, アクセス日:2023年10月4日、https://www.futuremarketinsights.com/reports/smart-wearables-market。
2Tae Hyun Kim他、“A Temporary Indwelling Intravascular Aphaeretic System for in Vivo Enrichment of Circulating Tumor Cells,” Nature Communications 10, no. 1478 (April 1, 2019), https://doi.org/10.1038/s41467-019-09439-9.
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デジタルツインや精密な組み立て技術により、超小型コネクタの製造を実現
超小型コネクタの開発の流れ
設計
デジタルツインの活用により、プロトタイプ作成前に迅速なテストとトラブルシューティングが可能になり、設計が簡素化され、設計期間が短縮します。
製造
モレックスでは、コネクタを製造する機械装置を開発し、小型コネクタの精密製造を実現しています。
配送
小さなコネクタピンは、製造中はもちろん、配送中も保護する必要があります。
コネクタの小型化に関する技術上・製造上の課題とは?
ピッチの縮小
標準的なピッチは2.54mmから0.35mmに縮小しており、誤差の許容範囲が小さく、高い精度が要求されます。
RF信号
電源
複合機能
コネクタは、信号と電力の両方を伝送可能にするなど、機能の複合化が求められます。
コネクタの小型化
小型コネクタには、信号損失、高抵抗、熱問題などが伴い、慎重な設計が必要です。
信号損失
高抵抗
発熱
部品メーカーでの小型コネクタの製造方法とは?
カスタム組み立てライン
製造工場は、小型コネクタを精密に組み立てることができるよう、カスタム組み立てラインが必要です。
米粒ほどの大きさ
米粒ほどの大きさのコネクタは壊れやすく、嵌合力を微調整した特殊な組立ラインが必要です。
特殊形状
小型デバイスは特殊な形状をしている場合があり、デバイス内の届きにくいコネクタを嵌合する際に課題が生じます。
スマートウォッチ
イヤフォン・ヘッドホン
市場の需要を牽引する主要な要因とは?
車載用配線
大電流配線の端子を1.5mm2から0.13mm2に縮小することで、70キロを超えていた配線ハーネスの重量とスペースが削減されます。
5G接続
2023年以降、携帯電話の62%が5Gに対応しています。ミリ波信号の損失を防ぐには、0.5mm以下のピッチのコネクタが必要です。
産業用シングルペアイーサネット (SPE)
従来のソリューションは4対の結線が必要だったのに対し、わずか1対の銅線でギガビットの伝送速度を達成し、産業用接続を大きく変革します。
ウェアラブル医療機器
米国成人の約30%がウェアラブル医療機器を愛用しています。小型コネクタは今や不可欠なコンポーネントです。
出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7600024
車載ADASを超えて広がるミリ波レーダー
J.J.ドリール(マウザー・エレクトロニクスへの寄稿)
Introduction
ミリ波(mmWave)レーダー技術は、先進運転支援システム(ADAS)機能の進歩に貢献し、新しい自動車技術に組み込まれています。ミリ波レーダーはADASシステムの成功によって身近な存在になり、その身近さから自動車以外のさまざまな用途で開発と利用が進んでいます。ミリ波レーダーの新たな用途のなかでもとりわけ普及が進んでいるのが産業オートメーションです。ミリ波レーダーの高い解像度と精度は、人と物体の検知にうってつけです。さらに人の血圧の変化や、疲労などの体調を示す生物学的サインも十分に検知できる感度も備えています。
ミリ波レーダーの用途が増え、高周波レーダーによってアンテナの小型化というメリットがもたらされたことで、よりコンパクトで携帯性に優れたミリ波レーダーシステムの開発に拍車がかかっています。医療やビルディングオートメーション、産業オートメーション、ロボットから未来の自動車のユースケースまで、開発中のシステムは多種多様な用途を対象としています。これらのより高い性能と小型化の要件を達成するためには、ミリ波レーダーモジュール自体の小型化だけでなく、センサモジュールの出力を電子制御ユニット(ECU)や人工知能/機械学習(AI/ML)コアに接続する相互接続の小型化にも多大な開発努力を払う必要があります。当然ながら、相互接続の小型化とスループット要求の増大には、シグナルインテグリティの確保という課題が伴います。
この記事では、自動車とそれ以外の用途に使用されているミリ波レーダー技術の微妙な違いとその現況をお伝えすることを目的として、 ミリ波レーダーの周波数、ミリ波アンテナやモジュールの小型化に関連する検討事項、そしてこのような大幅な小型化に取り組む際に直面するシグナルインテグリティの課題について解説します。
ミリ波レーダーの周波数
車載レーダーは複数の周波数帯を使用しており、そのうち現在主に使用されているミリ波周波数帯は4つありますが、 車載レーダー技術の主要な開発者と自動車メーカーは77GHz帯(76GHz~81GHz)にある程度落ち着いています。24GHz帯(21GHz~26GHz)もまだ超広帯域(UWB)レーダーや通信アプリケーションに使用されていますが、もはやADAS用の車載レーダーには優先的に使用されていません。ISMバンドには24GHzの狭帯域(NB)アプリケーションもあり、国際的に利用可能なため、車載レーダーの周波数帯域の第一選択肢となっています。しかし、77GHzレーダーは小型化のポテンシャルが高く、大幅に広い帯域幅を利用できることから、ミリ波周波数の方がはるかに魅力的になっているのです。例えば、24GHz ISMバンドは帯域幅がわずか250MHzなのに対し、77GHz帯は5GHzです。
さらに、アンテナの相対的なサイズは周波数に比例します。そのため、77GHzアンテナは24GHzアンテナの約3分の1のサイズになり、77GHzミリ波レーダーモジュールの組み込みは大きな24GHz車載アンテナよりもはるかに容易です。
77GHzミリ波レーダー周波数帯には、76GHz~77GHzと77GHz~81GHzという2つの主な帯域があります。76GHz~77GHzの1GHz帯域は主に車載長距離レーダー(LRR)に使用され、77GHz~81GHzの4GHz帯域は主に車載短距離レーダー(SRR)に使用されます。ただし、自動車以外の用途では、24GHz帯、60GHz/v帯 (57GHz~71GHz)、およびE帯(71GHz~76GHz、81GHz~86GHz、92GHz~95GHz)のミリ波レーダー周波数が開発されており、やがて展開されると思われます。
ミリ波レーダーアンテナの小型化で考慮すべきこと
アンテナの相対的サイズは周波数/波長に応じて変わります。波長が小さいほど、小さなアンテナで効率的に電磁界を伝導電気エネルギーに変換することができます。ただし、この自然の摂理に適う小型化には代償があります。高周波数のアンテナ素子は、低周波数に最適化されたアンテナ構造よりもゲインが低くなる傾向があります。これは高周波数のアンテナよりも電気長が短いためです。
大気と大半の素材も周波数に応じて減衰します。大気による減衰がマイクロ波よりミリ波の方が高いのはこのためです。さらに、導電損失と放射損失も周波数と共に増加します。つまり、ミリ波アンテナと低周波アンテナが同じ距離の送受信を行う場合、ミリ波アンテナの効率は大幅に低い傾向があります。ただし、ミリ波周波数が使用できる帯域幅を大きく増やせば、レーダー機能の精度とスループットは向上します。
この限界を克服するため、レーダー用のミリ波アンテナは先進的/アクティブアンテナシステム(AAS)、一般的にはフェーズドアレイアンテナであることがほとんどです。AASアレイアンテナを使用すると、複雑度が増し、追加ハードウェアが必要になるという代償はあっても、ゲインを上げ、アンテナパターンの制御を向上させることができます。ミリ波技術は従来から防衛、航空宇宙、人工衛星通信の分野で使用されてきました。ミリ波周波数を使用したRFコンポーネント、とりわけ77GHz帯のような高域周波数を使用するものは、まだ同じ水準に達していません。
ミリ波コンポーネントは大半の低域周波数コンポーネントに比べ規模が小さいため、全般に単価が大幅に高くなっています。ミリ波回路の総製造コストも高くなります。回路基板が平面伝送線路と導波管でミリ波信号を効率的に伝送するにはラミネートが必要ですが、これが高額で、精度向上と小型化のジオメトリに関連する加工にもコストがかかります。また、ミリ波のラミネート処理を必要な精度で実施できるPCB製造設備の数も多くありません。
こうした理由から、一般にミリ波プロジェクトに取り組む体制が整ったエンジニアリングサービス企業は少なく、ミリ波レーダー回路の開発を支援できる経歴と専門知識を持つエンジニアも少ないのです。この種の技術の開発には手間がかかります。また、ミリ波レーダーの開発に使えるターンキーソリューションはほとんどないため、業務の大半を社内で行う必要があります。
高密度ミリ波レーダーの相互接続に良好なシグナルインテグリティを維持する
ミリ波レーダーアンテナシステムには追加アンテナ構造とハードウェアコンポーネントが必要です。これにはより複雑で高密度のミリ波が必要となり、さらにミリ波レーダーモジュール内はもちろん、レーダーモジュールとプラットフォームの制御システム電子部品間にもデジタル信号ルーティングが必要となります。
多くの場合、ミリ波レーダーモジュールに使用される電子部品は、特殊な高周波ラミネート上に高集積され、特殊なミリ波基板対基板用相互接続を備えています。ミリ波電子部品でシグナルインテグリティと良好な性能を確保するために必要な精度を考慮すれば、ごみや湿気の侵入と損傷を防ぐため、システムを環境的に密閉し、高耐久化する必要があります。そのため、ミリ波レーダーモジュールへの相互接続も密封と高耐久化が必要です。
ミリ波レーダーを小型化する主なメリットは、移動式システムや携帯型システムにも統合できることです。移動式システムと携帯型システムは、特に自動車、工業、防衛/航空宇宙分野で、しばしば過酷な環境、衝撃、振動に曝されます。こうした用途に使用するコネクタとケーブルは、極限の環境で高度なシグナルインテグリティを提供する必要があります。ミリ波レーダー用のコネクタも、薄型・高ピッチ設計で非常にコンパクトにする必要があるため、かなり困難な設計課題になります。自動車、工業、防衛/航空宇宙の場合、特定の用途と環境で使用するコネクタには基準と品質管理システムを実装しなければなりません。市場にこれらの要件をすべて満たすコネクタはほとんどありません。
まとめ
ミリ波のアンテナシステムと回路の設計では、設計ニーズのすべての側面を広範囲にわたって最適化し、精密に製造する必要があることから、様々な検討を重ねる必要があります。信頼性の高いミリ波レーダーシステムを実現するには、ミリ波レーダーモジュール回路で、またミリ波レーダーモジュールと制御電子部品間で、高度なシグナルインテグリティを確保することが不可欠です。これには、過酷な条件下でも高いデジタルスループットを処理できる耐久性の高いコネクタが必要です。さらに、ミリ波レーダーモジュールは、自動車以外の用途でも使用できるように、ますます小型化が進んでいます。この小型化により、高耐久化・高速相互接続だけでなく、より高密度で薄型の相互接続設計という要件が加わります。
写真画像出典(表示順)
Robert - stock.adobe.com, Blue Planet Studio - stock.adobe.com
小型化するIoTセンサノード
スティーブ・タラノビッチ(マウザー・エレクトロニクスに寄稿)
工場の自動化はかつてない生産性と効率をもたらしますが、柔軟性とインテリジェンスに欠けています。インダストリー4.0と5.0は、ワイヤレスとコンピューティングの進歩を活用して工場のスマート化を推進し、工場設備にリアルタイムの洞察をもたらそうとしています。このようなデータに基づくアプローチによって、受動的なオートメーション機械は、リアルタイムと予測的な判断が可能な分散型インテリジェントデバイスのネットワークに生まれ変わります。
接続された産業世界の原動力となる情報は、増え続けるワイヤレスセンサノードからもたらされます。ワイヤレスセンサノードの主な利点は、継続的に多くのパラメータを監視できることです。例えば、こうしたセンサを配管に設置すれば、液体の流れなど、主要なパラメータを監視できます。ワイヤレスセンサノード は、靴箱くらいの大きさから気づかないほど小さなものまで、さまざまなサイズがあり、一般にワイヤレス無線モジュール経由で通信します。
ワイヤレスセンサノードは環境モニタリング、産業制御、インフラセキュリティなどの分野で広く採用され、一般にマイクロコントローラ (MCU)、トランシーバ、メモリユニット、電源、および周囲環境を感知する1つ以上のセンサで構成されます (図1)。
産業環境では、センサノードの有線ネットワークを展開するのは、製造環境が複雑で動的なために困難な場合があります。ワイヤレスセンサネットワークでは、広範囲にわたる配線が不要なため、可動性を向上させ、モニタリングシステムの迅速な導入と再構成を可能にすることで、これらの課題に対処します。そして膨大な数のセンサをZigbeeやWirelessHARTといったメッシュネットワークで接続することもできます。
ワイヤレスセンサネットワークは、状態監視、予知保全、アセットトラッキング、環境監視など、さまざまな用途に採用されています。こうしたネットワークは施設全体に分散配置されたバッテリ駆動の小型センサで構成され、各センサは互いに通信し、場合によっては中央制御システムとも通信します。センサは固有の要件に従って、温度、湿度、圧力、振動などのパラメータを測定します。
より小型で、より高精度なセンサ
新しいセンサは作業の流れを妨げることなく、既存の工場スペースに適合しなければなりません。小型化により、センサはスペースや電力を気にすることなく、産業環境にシームレスに適合させることができます。例えば、ロボットアームに付けるセンサは、アームの動きを妨げないくらい小さくて軽量でなければなりません。予知保全では、小型のワイヤレスセンサを機械部品に戦略的に配置すれば、通常の運転を妨げることなく状態を監視し、異常を検出することができます。こうしたセンサは機械や生産ラインに直接組み込むことも、作業員に装着させることも可能で、作業の流れを妨げることなく広い空間をカバーできます。
スマートファクトリーがデータに基づいてリアルタイムの意思決定を行えるようにするため、センサは小型化されても、ますます複雑化する動作をより正確にを実行する必要があります。収集したデータに産業環境の正しい状態を確実に反映させるには、センサの正確さが必要不可欠です。センサの測定値が不正確だと判断を誤り、非効率な運転、ダウンタイムの増加、製品品質の低下につながる可能性があります。例えば、予知保全にセンサを使用する場合、センサのデータが正確であれば、ダウンタイムを設けて必要なメンテナンスを行うことができます。
ワイヤレスセンサの高い精度を得るには、入念な較正、定期的なメンテナンス、厳しい品質基準の遵守が必要です。較正は、センサが長期間にわたり環境の変化とセンサのドリフトといった要素を考慮して、正確で一貫性のある測定を行えるように保証するものです。またセンサが異常を自己検出するように較正することも可能で、 測定値が較正範囲から外れると、センサが測定値をエラーと判断して保守の必要性を表示できるようにします。
スマートな産業環境では、予防や是正の措置をリアルタイムで自動的に実施しなければなりません。スマートファクトリーのこうした判断が信頼されるには、信頼できるデータに基づいた運用が必要です。較正されたセンサは正確な測定値を示し、冗長性により信頼性の高い結果が得られます。さまざまなパラメータを測定すれば、工場現場で起きていることに対する洞察が深まり、スマートな機械はより豊富な情報に基づいた判断ができるようになります。
ワイヤレスセンサの電源
ワイヤレスセンサノード設計の非常に重要な課題のひとつに電源があります。小さなフォームファクタという制約のなかで、長い動作寿命と、センサノードの少ないエネルギー貯蔵力のバランスを取るのは困難です。センサはしばしば電源ケーブルを引けない離れた場所にあります。通信プロトコルを最適化し、エネルギー効率の良いコンポーネントを使用するといった低電力設計の原則は、エネルギー消費を最小化に大きく貢献します。
一般にワイヤレスセンサノードの電源には、便利で信頼性の高い電池が使用されていますが、 電池はエネルギー容量に限度があるため、ネットワークの寿命を伸ばすには入念なエネルギー管理戦略が必要です。さらに遠隔地やアクセスできない場所に配置されたノードでは、電池の充電や交換が現実的でない場合や不可能な場合があります。
ワイヤレスセンサノードの持続可能性を高めるために、充電式電池やスーパーキャパシタなどの先進的蓄電技術が採用されています。スーパーキャパシタは、電荷の分離により電気エネルギーを貯蔵する蓄電デバイスです。電池とは異なり、スーパーキャパシタは急速な電力供給が可能で、ライフサイクルも長いのが特徴です。突発的にセンサを作動させる必要がある場合など、特に急速放電が不可欠な用途に非常に適しています。ただし、スーパーキャパシタは一般に電池よりもエネルギー密度が低いため、充電や環境発電で補助しないと、長期間センサノードを持続できない可能性があります。
ワイヤレスセンサノードへの電力供給には、ノードに環境発電機能を追加する方法もあります。環境発電装置はローカル環境から、機械エネルギー、熱エネルギー、あるいは太陽光発電など、利用可能なエネルギーを回収し、電気エネルギーに変換します。
太陽光環境発電は、最も一般的な環境発電手法で、光電池を用いて太陽光を電気エネルギーに変換します。屋外の日当たりの良い場所では、太陽光エネルギーが継続的で信頼性の高いエネルギー源となるため、電池を交換しなくてもワイヤレスセンサノードの長期運転が可能です。ただし、太陽光環境発電の有効性は、地理的位置、気象条件、センサノードのエネルギー要件などに影響されます。
環境発電には他にも、機械的振動で発電する圧電材料、温度差を電気に変換する熱電発電装置などがあります。これらの方法は振動や温度差が多い産業環境で特に有効です。環境発電は、電池を交換せずに無限に運転できる可能性がありますが、環境条件に大きく左右されます。環境エネルギー源は間欠的で変化する性質があるため、継続的に信頼性の高い運転を保証するには、効率的なエネルギー貯蔵・管理システムが必要です。
過酷なセンサ環境
ワイヤレスセンサは、工業環境から遠隔地の屋外環境まで、しばしば過酷な環境下で運用されています。こうした環境には固有の課題があり、センサノードが信頼性の高い運転を確保するには堅牢設計を考慮する必要があります。産業環境のセンサは、極端な温度、高湿度、腐食性物質、機械的振動に曝されるかもしれません。例えば、製造工場のセンサは、処理工程で急激な温度変化や化学物質に曝される可能性があります。こうした状況では、機能性を損なわないように、センサを高耐久化し、筐体で保護して、過酷な条件に耐えられるようにする必要があります。
環境モニタリングや農業など、屋外で使用するセンサノードは、雨や雪、極端な温度など、さまざまな気象条件に曝される可能性があります。こうしたケースでは、防水・防塵性、極端な温度への耐久性を備えるセンサを設計し、正確なデータ収集を維持できるようにしなければなりません。過酷な環境下にあるワイヤレスセンサノードは、環境要因だけでなく、周囲の重機、電力設備、他の無線デバイスから発生する電磁干渉(EMI)にも対処しなければなりません。干渉を軽減するには、強固な通信プロトコルと信号処理技術を採用し、データインテグリティとネットワークの信頼性を保証します。
材料科学、センサ技術、通信プロトコルの進歩によって、多様で過酷な環境と用途に対応する柔軟性のあるワイヤレスセンサノードやネットワークの開発では、イノベーションが続いています。例えば、Molex Contrinex (図2) 誘導型センサシリーズは小型フォームファクタで、スペースが限られた用途に理想的です。さらに保護等級IP67またはIP69Kの密閉構造が過酷な環境からセンサを守ります。
まとめ
ワイヤレスセンサノードは、産業用スマートオートメーションシステムを強化し、予知保全戦略の実施、エネルギー消費の最適化、全体的な運用効率の向上を実現します。その小型フォームファクタは、多くの場合、エネルギー効率の高い設計と合わせて、機械、装置、さらには危険な場所や手の届きにくい場所への統合に適しており、産業プロセスを最新化するためのスケーラブルで柔軟なソリューションを提供します。
写真画像出典(表示順)
Damian Sobczyk - stock.adobe.com, EwaStudio - stock.adobe.com
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