ADASの図
車載イーサネットによる信号送信
イーサネットや他の車載インターフェイスには、放出を最小限にとどめ外部ノイズの影響に対する耐性がある差動伝送信号が活用されています。外部ノイズは両方の差動伝送信号線に同じ方法で入ることが多いため、これによってその違いに影響を及ぼすことはなく、またこれらの線は外部ノイズに対する耐性が強いことが特徴です。もう1つの利点: ペアの信号線が隣接しているため、信号電流によって生成される磁場はキャンセルされます。そのため、外部にはノイズが発生しにくくなっています。
信号送信の図
車載イーサネットのノイズの問題
(ノイズが発生しにくい)差動伝送線では、コモンモード電流がさまざまな要因によって生成されるとノイズの問題が発生することが依然としてあります。
電流フローの図
コモンモードのノイズ要因
差動伝送線の特徴の1つは、概してコモンモードノイズが発生しないことです。しかし、スキュー(時間差)または振幅の差が両方の線の間の信号で発生すると、両方の線の間の信号バランスが失われます。そのため、コモンモードノイズが発生します。
信号線の図
車載イーサネットのノイズ抑制
イーサネットの問題
イーサネットに使用されるケーブルとHDMI、USB、その他の規格に使用されるケーブルには違いがあります。
HDMI、USB、類似ケーブルは、信号線と個別のアース線で構成されるペアが特徴です。結果として、コモンモード電流が流れても、電流はアース線を通過して戻ります。そのため、コモンモード電流によって磁界が打ち消され、ノイズが発生しにくい傾向となります。
一方、イーサネットケーブルにはアース線がありません。そのため、コモンモード電流が戻る経路は浮遊容量を通過する接地であり、ノイズ放出が発生しやすくなります。
HDMI、USB、類似ケーブルの使用
イーサネットケーブルの使用
コモン モード チョーク コイル
コモンモードチョークコイル(CMCC)は、車載イーサネットおよびその他の差動送信を対象としたノイズ抑制対策に効果的です。
チョークコイルは、共通のコアを中心に2本の線を反対方向に巻いて形成されています。差動モード電流の両方の線によって生成された磁束は、お互いをキャンセルし差動電流に影響を及ぼしません。コモンモード電流の両方の線によって生成された磁束は互いに補強し合い、インダクタとして機能します。この動作のおかげで、差動信号に影響を及ぼすことなくコモンモードノイズを効果的に減衰できます。
チョークコイルの図
車載イーサネットでのCMCCの使用
CMCCのバランスは、車載イーサネットに重要です。CMCCを構成する2本の線の長さや巻線に違いがある場合、電流のバランスが悪くなる可能性があります。これがモード変換の原因となる場合があり、コモンモードノイズを発生させます。このため、両方の線のバランス維持を目的に設計されたCMCCを選択する必要があります。
MurataのDLW32MH101XT2 CMCCは、1000Base-T1ノイズの抑制に最適です。1000Base-T1での使用量に基づいたインピーダンス値が特徴で、モード変換の発生を防止するバランスのとれた設計になっています。
車載イーサネットCMCC
DLW32MH101XT2
DLW32MH101XT2CMCCは、次の3つの重要な要素を実現しています:
• 自動車ネットワークの信号線から発生するノイズの抑制に効果的です。
• 1000Base-T1車載イーサネット規格に完全準拠
• -40°C~+125°C動作温度範囲(車載アプリケーション)
DLW32MH101XT2の伝送特性
伝導放射の防止
伝導放射の計測条件
伝導放射は、1000Base-T1 EMC試験ボードを使用して計測(150Ω方式)しました。
測定条件
ノイズ減衰の結果の比較
コモンモードノイズを1000Base-T1EMC試験ボードの信号線に伝導します。計測は、EMIレシーバを使用して行います。この研究では、ノイズを比較するためにCMCCを変更しました。
1000Base-T1 EMC試験ボード
放射試験に使用するCMCC
Murataは、CMCCの試験にDLW32MH101XT2(1000Base-T1のCMCC)を使用しました。比較には、DLW43MH201XK2(CMCC 100Base-T1)およびDLW32SH101XK2(CANではCMCC)を使用しました。
1000Base-T1ボードの特性
計測結果
伝導放射の計測結果は、ノイズを低減して制限値を満たす上でもっとも効果的なのは1000Base-T1を対象に設計されたDLW32MH101XT2であったことを示しています。DLW43MH201XK2およびDLW32SH101XK2では、制限値を満たす上で十分なノイズの低減を得ることができませんでした。
結果の図
ノイズ発生メカニズム
CMCCによるノイズ抑制の結果に違いがあった要因の1つは、モード変換特性Ssd12の影響であると確信できました(下の図1)。Ssd12の値が高いと入力された差動モード信号の大半がコモンモードノイズに変換されます。その結果、ノイズレベルが向上しました。
図1
ノイズ抑制の主要なポイント
伝導放射の計測結果は、低周波数でScc21によって低減できるコモンモードノイズのレベルを示しています。また、Ssd12モード変換特性によって高周波でコモンモードに変換される量を低減できるレベルも示しています。
主要なポイントの図
ボードの設計上の注意事項
ボード設計の重要なポイントは、CMCC評価によってはっきりしました(下の図2)。同じ条件の下で1000Base-T1に同じCMCCサンプルが試験ボードにインストールされていると、ノイズレベルが異なりました。1台のボードでは結果の失敗も発生しました。(注: CMCCサンプルが同一であっても試験ボードの一部のステータスの結果が失敗する場合があります。)
Murataは、ボードの伝送経路特性を分析した際に、CMCC出力側でのモード変換特性の違いがありボード#2の値が高いことに気が付きました(下の図3)。
ボードによる伝導ノイズレベルの違いの要因の1つとして考えられることは、CMCCを通過した後の差動モード信号がボード上でコモンモードノイズに変換された、ということです(下の図4)。
モード変換の発生の重要なポイント(下の図5)には、CMCC出力側の抵抗器、コンデンサ、ボード配線があります。これらの部品の特性にばらつきがあり、バランスが悪くなっていると考えられます。このため、CMCC以外の部分では、線と線の間の特性バランスを維持に注意が必要です。
図2
図3
図4
図5
100Base-T1での伝導放射
100Base-T1に対して同じ伝導放射計測を実行すると、CANにDLW32SH101XK2を使用する場合に制限値を超えました。しかし、100Base-T1向けに設計されたDLW43MH201XK2は、制限値を満たす上で十分なノイズ低減の効果を発揮しました。
100Base-T1の読取値
100Base-T1 Vs. 1000Base-T1
差動モード信号に搭載されている周波数の部品は、100Base-T1と1000Base-T1の間で異なります(下の図6)。そのため、必要となるモード変換特性も異なります。この理由から、それぞれの規格に適合するように設計されたCMCCを選択する必要があります。
図6
耐性(DPI)対策の試験
直接電力注入(DPI)試験は、伝導放出と同じ1000Base-T1 EMC試験ボードを使用して実施しました。
測定条件
試験プロセス
コモンモードノイズを、外部源から1000Base-T1EMC試験ボードの信号線に伝導します。通信エラーが発生したかどうかを確認するために、制御PCを使用します。
1000Base-T1ボードでのCMCC
DPI試験に使用するCMCC
Murataは、試験CMCCとして伝導放射と同様にDLW32MH101XT2(1000Base-T1のCMCC)、DLW43MH201XK2(100Base-T1のCMCC)、DLW32SH101XK2(CANのCMCC)を使用しました。
1000Base-T1ボードの特性
1000Base-T1 DPIの試験結果 - 1
2MHz以下の低周波数で、CMCCは性能レベルの違いを示しました。その一方で、他の周波数で性能に違いがなく、すべてのCMCCが制限値を満たしました。
DPIの結果の図 - 1
1000Base-T1 DPIの試験結果 - 2
2MHzおよびそれ以下のCMCCにおける違いは、コモンモード減衰(Scc21)によるものと確信できました。モード変換特性の違いは、DPI試験の結果に影響を及ぼしませんでした。
DPIの結果の図 - 2
耐性(DPI)対策の試験の重要なポイント
100Base-T1 DPI試験の結果
1000Base-T1後に、100Base-T1でもDPI試験を実施しました。100Base-T1のCMCCは、制限値を満たしました。ただし、CANのCMCCは、1MHzおよびそれ以下の低周波数で100Base-T1のCMCCよりもパフォーマンスが低下しました。また、8MHz~60MHzでの制限値を満たしておらず、試験に失敗しました(下の図7)。
2MHzおよびそれ以下での違いは、コモンモード減衰(Scc21)のためと考えられました。また、8MHz~60MHzでの違いは、モード変換特性によるものと考えられます(下の図7)。
図7
図8
ノイズが入り込むメカニズム
CMCCのモード変換特性が100Base-T1の試験結果に影響を及ぼす理由に関する要因の1つは、外部源から入ったコモンモードノイズが作動モードノイズに変換されたことです。このプロセスによって信号波形が歪み、通信エラーにつながりました。
通信エラーの図
ボードの設計上の注意事項
伝導放射と同様の方法で、CMCCに加えて、これはボード上でのバランスの悪さが原因でモード変換によっても発生する可能性があります(下の図9)。そのため、ボード設計には細心の注意が必要です。
図9
結論
•車載イーサネット規格1000Base-T1の場合、ノイズ抑制に使用されるCMCCには高性能が必須です。モード変換特性は特に重要です。
•伝導放射の評価では、ノイズの抑制には1000Base-T1に必要な値を満たすモード変換特性があるCMCCが必要です。CANや100Base-T1にCMCCを使用しても制限値を満たすことはできません。
•ボードの設計や設置されている部品にばらつきがあるため、1000Base-T1用のCMCCであってもモード変換特性が悪くなる可能性があり、ノイズのさらなる発生につながります。そのため、設計プロセスではこの点に注意を払う必要があります。
•耐性試験であるDPI試験においてCMCCに必要とされる性能は、伝導放射の性能より低くいです。ですが、ノイズ抵抗はPHYによってさまざまです。そのため、モード変換特性が低いことが望ましいと言えます。
注目のCMCC
1000Base-T1向け: DLW32MH101XT2L
• 自動車ネットワークの信号線から発生するノイズの抑制に効果的です。
• 1000Base-T1車載イーサネット規格に完全準拠
• -40°C~+125°C動作温度範囲(車載アプリケーション)
100Base-T1向け: DLW43MH201XK2L
• 4.5mm (L) x 3.2mm (W) x 2.7mm (H)、寸法許容差±0.2mm
• そのコンパクトサイズにもかからず、(0.1MHz)で200μHのコモンモードインダクタンスを実現
• モード変換特性の大幅な改善
コミュニティフォーラム
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